国公立美術館では初となる大規模個展
特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」が国立国際美術館で2024年6月4日(火)から10月6日(日)まで開催される。明治期における洋画の歴史を参照しながら自画像を描き、また奔放かつ繊細な抽象ドローイングも数多く手がける梅津だが、近年では陶芸や版画の制作でも知られ、作品制作の枠を飛び越え私塾の開設や展覧会の企画、非営利ギャラリーの運営、批評テクストの執筆など幅広い活動を展開している。
本展ではそのような多岐にわたる梅津のフィールドの、2000年代半ばより始まる活動の軌跡を追っている。しかしいわゆる「回顧展」では必ずしもなく、梅津が常々問うてきた「この国で美術家として生きることはいかにして可能なのか?」を起点に「人がものをつくる」という行為の可能性について再考するものとなっている。
展示構成
知られざる蒙古斑たちへ
梅津は、日本の洋画の歴史を参照しつつ裸の自画像を手がけることで知られている。ラファエル・コランや黒田清輝など、この国の「美術」の始祖たちを下敷きにするその制作によって、彼は「この国で美術家として生きること」の可能性を根本から問いなおそうとした。一方、彼が人知れず手がけていた大量のドローイング群は、個人的かつ私秘的な制作への関心をありありと物語っている。
花粉を飛ばしたい!
美術家として作品制作だけで身を立てることは難しい。そんな現実と向き合いながら、なお美術という領域において「私有地」を確保していくことが、梅津の課題であった。「花粉」というキーワードが示唆するように、彼はいつでも異質なもの同士の思いがけない出会いを、そしてそれがもたらす予測不能な出来事の連鎖をもくろんでいる。
新しいひび
2021年春、梅津は滋賀県に位置する六古窯のひとつ、信楽へと移住。長引くコロナ禍の閉塞感に疲れ、さらには現代美術という領域そのものへの不信を募らせていた当時の梅津には、作陶によって、いまいちど制作する意欲を取り戻すための時間が必要であった。
現代美術産業
粘土を捏ね、施釉し、窯で焼く日々を送るなか、梅津は次第に自らの制作を下支えしてくれる「インフラ」への意識を強めていった。窯という施設、また工人のサポートがなければ成立しない作陶実践を経て、あらためて意識されるのは「「つくる」とは個人に帰属するものだけでない」という事実だった。
パビリオン、水晶宮
梅津はあらゆるものをその身に引き受け、総合しようと企てた。過去と現在、産業と芸術、プロとアマ、「美学と政治」といった線引きを曖昧にしていくことが、その主たる狙いだった。
梅津庸一
1982年、山形生まれ。美術家・パープルーム主宰。現在、相模原と信楽の二ヶ所で活動を展開。展覧会開催も多数。
特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」開催概要
会期 | 2024年6月4日(火)~10月6日(日) |
時間 | 10:00~17:00、金曜・土曜は20:00まで |
会場 | 国立国際美術館 地下3階展示室 |
休館日 | 月曜日 ※7月15日(月・祝)、8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)は開館し、7月16日(火)、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)は休館 |
料金 | 一般1,200円/大学生700円/高校生以下・18歳未満無料 |
URL | https://tinyurl.com/eay2266c |