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エリザベス・ストリート・ガーデン

ニューヨークのノリータ地区の一画に、エリザベス・ストリート・ガーデン(Elizabeth Street Garden)と呼ばれる小さな公園がある。長い間人々に愛されてきたが、再開発で存続の危機に瀕している。

パティ・スミスやマーティン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロなどの著名人を含む40万人の市民が取り壊しへ反対の嘆願書を市に提出し、先日のニューヨーク・ファッション・ウィークではデザイナーが公園をランウェイに使用しプロテストを行うなど、市民はさまざまな手段で抗議しているが、いまだ再開発の計画は中止に至っていない。

9月10日に取り壊されると聞き見に行ったところ、まだ残っていてほっとした。しかし来週にも無くなっているかもしれない。

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1800年代、ここにはかつて公立学校があった。その後廃虚となり荒れ果てたが、1990年にエリザベス・ストリート・ギャラリーがこの土地を市から借用した。土地を整備するという約束のもと、ギャラリーは芝生を敷き、草花や梨の木を植えた。

入念に造園した後、所有する野外彫刻や造形物のコレクションを敷居内に展示した。その後、ギャラリーは隣に移転し、この庭園をコミュニティに開放する。2014年からは非営利団体「フレンズ・オブ・エリザベス・ストリート・ガーデン」が運営を行い、地域のコミュニティメンバーやボランティアによって長年支えられながら今日に至る。

この稀有な公園では、人々は思い思いに散策したり、読書をしたり、ノートに文字を書き綴りながら自分の世界に浸ることができる。何十年と野外に置かれた彫刻は時の経過とともに独特な表情を醸し出し、都会の一角にあるこの幻想的な空間は、もの思いにふけるには最適な場所だ。

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野外ではあるのだが、屋根裏部屋のような少し閉じた雰囲気が佇む。人の周りを奇妙なオブジェが囲っているからかもしれない。

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19世紀のフランスの詩人ボードレールは、都市部の遊歩者をフラヌールと呼んだ。あてもなく散策する放浪者という意味だ。

ボードレールによると、完璧なフラヌールは、世界を見て、世界の中心にいながら、世界から隠れたままであるという。工業化によりもたらされた社会の疎外感を含む表現だが、近代社会における芸術家の在り方を探ったものだ。いいアイデアは散歩中に生まれるとも言われるが、散策は創造の一歩でもある。

ニューヨークは殺伐とした都会ではあるが、それでもなお詩人のように生きようとするフラヌールが多い気がする。その秘密はこういった場所のパワーかもしれない。

エリザベス・ストリート・ガーデン情報

AddressElizabeth Street. Between Prince & Spring Streets, New York, NY 10012
Hoursweekday: 11:00am - 6:00pm, weekend: 10:00am - 6:00pm
URLhttps://www.elizabethstreetgarden.com/