読売文学賞 / 研究・翻訳部門を受賞

平凡社が発刊した、鷲見洋一(すみ・よういち)著『編集者ディドロ――仲間と歩く『百科全書』の森』が読売文学賞 / 研究・翻訳部門を受賞した。18世紀フランスが生んだ、世紀の大事業『百科全書』。全28巻、300名近い執筆者、20年を超す編集作業。この壮大なプロジェクトはいかにして計画され、幾多の苦難を乗り越えて実現したのか?そして「編集長」を務めた思想家ディドロの八面六臂の活躍と、それを支えた「結社」の仲間たちとの連帯の物語を綴った一冊となっている。adf-web-magazine-encyclopaedia forest-1

18世紀の「出版」を通して、彼らが夢見た世界へのまなざしとは

18世紀フランス研究の第一人者である鷲見洋一が、フランス各地の膨大な資料と最新研究を博捜。200点近い多彩な図版を駆使して、この壮大な出版プロジェクトの全貌と未来を約900頁にわたって縦横無尽に論じた。まさに編集者ディドロの意気に通じる、世界でも類のない、出版界の「金字塔」となる大著である。adf-web-magazine-encyclopaedia forest-2

鷲見洋一(すみ よういち)

1941年生まれ。フランス文学・思想・歴史。慶應義塾大学名誉教授。慶應義塾大学大学院博士課程修了、モンペリエ大学大学院博士課程修了。慶應義塾大学教授、同大学アート・センター所長を歴任。著書に『翻訳仏文法』上下(ちくま学芸文庫)、『『百科全書』と世界図絵』(岩波書店)、『一八世紀 近代の臨界 ディドロとモーツァルト』『いま・ここのポリフォニー』(共に、ぷねうま舎)ほか。編著に『モーツァルト』全4巻(共編、岩波書店)、 訳書にロバート・ダーントン『猫の大虐殺』(共訳、岩波書店)、『ドゥニ・ディドロ著作集 第4巻 美学・美術 付・研究論集』(共訳、法政大学出版局)ほか。

目次

  • 第1章 『百科全書』前史
  • 第2章 『百科全書』刊行史
  • 第3章 編集者ディドロの生涯
  • 第4章 商業出版企画としての『百科全書』
  • 第5章 『百科全書』編集作業の現場
  • 第6章 「結社」の仲間さまざま
  • 第7章 協力者の思想と編集長の思想
  • 第8章 図版の世界
  • 第9章 身体知のなかの図版

ドゥニ・ディドロ(Denis Diderot)

1713‐1784。フランスの哲学者、美術批評家、作家。主に美学、芸術の研究で知られる。18世紀の啓蒙思想の時代にあって、ジャン・ル・ロン・ダランベールとともに百科全書の編集にあたる。いわゆる百科全書派の中心人物であり、編集にあたっては、編集方針の確定、執筆者への依頼、校正、政府との交渉など、仕事に邁進。諸分野の学問、技術の知の開かれた協働を成し遂げる。

百科全書

ディドロとダランベールを編集責任者とし、264人の執筆者の協力によって成立したフランス18世紀の大百科事典。二つ折判(縦40センチ・横25センチ)で、本文17巻、図版11巻からなり、ル・ブルトンを中心とする連合出版社から発刊された。まず1750年10月に「趣意書」8000部を配布して予約購読者をつのったのち、本文は51年6月から66年1月中旬から3月末までにかけて、次いで図版は62年1月から72年にかけて、それぞれ刊行を完了した。この間、宮廷内の反動派、イエズス会、ジャンセニスト、反動的文筆家たちの露骨な策動があったにもかかわらず、最初1000人だった購読者は最後には4000人にまで膨れあがった。ディドロ、ダランベールを中心に集まった項目執筆者たちは、通常「百科全書派」と呼ばれている。              

読売文学賞について

読売文学賞は戦後の文芸復興の一助とするため、1949年度(昭和24年度)に創設。「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門において、前年の最も優れた作品が選ばれる国内唯一の総合文学賞。これまで研究・翻訳賞は、第1回『改訂増補 明治大正詩史』(日夏耿之介)以来、和辻哲郎、鈴木信太郎、呉茂一、河盛好蔵、白洲正子、大野晋、丸谷才一など、錚々たる研究者・文人が受賞しています。近年では、千葉文夫『ミシェル・レリスの肖像』(2019年)、角田光代『源氏物語訳』(2020年)、くぼたのぞみ『J・M・クッツェーと真実』(2021年)が受賞している。

編集者ディドロ――仲間と歩く『百科全書』の森

仕様46判上製 / 896頁
刊行2022年4月刊行
定価5280円(税込)
装丁守先正