今回は2019年11月に参加した上海の郊外にあるアーティスト・イン・レジデンス、Untitled Spaceのプログラムについてレポートします。上海は飛行機で3時間前後に簡単にアクセスでき、観光地、ギャラリーや美術館も多く気楽に旅行できるのが魅力的です。毎年11月はArt021やWest Bund Art & Designといった大規模なアートフェアが開催され、今年も大勢の人で賑わっていました。

今回参加したアーティスト・イン・レジデンスは上海市内から1時間ほどの郊外で、朱家角（しゅかかく）という水郷の町に位置します。水郷は大小様々な運河を中心に発展した数百年も前の建物がそのまま残り、高層ビルだらけのダウンタウンとは対照的に中国の歴史や文化を垣間見ることが出来る美しい景観を残しています。露店やレストランも多く大人気の観光スポットです。

レジデンシーの建物自体は新築の近代的な建物で、生活空間、スタジオ、展示スペースが一体となった構造となっており、スタッフは親切な方ばかりでした。7名ほど参加していたアーティストは、オーストラリア、中国、ロシア、シンガポールなど国籍は様々で、制作ジャンルも様々でしたが、フレンドリーで和気藹々としていました。英語は、現場ではある程度必要ですが、飲食店や町の中では英語を全く喋らない人の方が多いので、その際はグーグルの翻訳アプリなどを使用すれば、それほどコミュニケーションには困りませんでした。また制作スペースやギャラリーの広さも申し分なく、生活コストも驚くほど安いので、集中して普段と異なった環境で制作したい方、制作の傍ら中国のアートシーンを学びたい方や、アメリカやヨーロッパまでいって制作するのは面倒という方にはかなりお勧めです。

今回、Untitled SpaceのディレクターのLiu Zhenに簡単なインタビューを行いましたので掲載します。

Liu Zhen

自己紹介をお願いします。

Liu Zhenです。シンガポールの芸術大学院を卒業後、制作活動を続ける傍ら2017年にUntiteld Space®をオープンしました。その後は制作を続けながら、レジデンシープログラムの運営を行っています。

Untitled Space®とはどのようなレジデンシーですか？

自分を中心に、アーティストが運営するレジデンシーで、国籍を問わず参加者に制限や隔たりのない空間を提供することが目的です。アーティストの個展のサポートやコミュニティに開放されたワークショップなども行っています。また海外アーティストや中国アーティストとのコラボレーションなども積極的に促進しています。

レジデンシーをオープンしたきっかけは何かありましたか？

2017年にレジデンシーの運営を始める以前は、上海にはそれほど多くのレジデンシープログラムは無く、アーティストが運営しているものは皆無でした。フルタイムで制作していた頃は、色々な国のレジデンシープログラムに参加しましたが、参加する度に制作のキャリアを積む上で、レジデンシーは非常にいい経験になり、再教育の場にもなると感じていました。2017年に上海に拠点を移した後、Untitled Space®を企画し、2年間で80名近い様々な国籍のアーティストに、制作や展示のプラットフォームを提供する事ができ、大変光栄に感じています。

上海のアートシーンはどのような印象を受けますか？

上海のアートシーンは非常に活発だと思います。毎年500以上の展覧会が開催され、近年ではいくつも新しい美術館や大きなギャラリーがブランチをオープンしています。上海アートシーンで一番期待できることは、海外で学んだ若手のアーティストが中国に帰国した際に、上海を活動拠点の場に選ぶことが一番多く、上海がより国際色豊かになり、今後さらに活気づくことを期待しています。

最後にUntitled Spaceでのレジデンシーの概要をお願いします。

朱家角は上海で有名な観光地ですが、上海のなかでもかなり大きなアーティストのコミュニティーがある地域であり、50人以上の地元のアーティストや海外からのアーティストが生活をしながら制作を行っています。レジデンシーの最後の週には、作品を発表する機会を設けたり、週ごとに任意でのオープンスタジオ、アーティストトークやワークショップを行っています。定期的に上海のギャラリストやアートディーラーもUntitled Spaceのスタジオに訪れるので、制作発表だけではなく、上海でネットワークを作る際の非常に良い機会にもなります。ジャンルや国籍を問わず、多種多様なバックグラウンドの参加者を常時募集しております!

"Contemporary Medicine" Exhibition, Zhong Lexing