地域活性化に貢献したアーティストによるトーク

国際文化会館がシアスター・ゲイツを招聘した「Architalkシリーズ2024」が2024年3月29日(金)より配信されている。本シリーズは2016年より「建築」を通して現代社会について考えるプログラムとして国際文化会館が展開しているもの。国際文化会館は日本モダニズム建築の巨匠である前川國男、坂倉準三、吉村順三の共同設計により誕生し、2006年に本館が文化庁の「登録有形文化財」に指定されている。

都市計画と彫刻を学んだシアスター・ゲイツは、治安の悪化が著しかった故郷米国シカゴのサウスサイドを拠点に、彫刻、陶芸といったアート、建築、音楽などをフックに「ドーチェスター・プロジェクト」を展開。地域の人々が集まるコミュニティ空間を創出し、地域活性化に貢献したアーティスト。

またゲイツは愛知県常滑市で陶芸を学び、アメリカの公民権運動のスローガンである「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の民藝運動の哲学とを融合させた「アフロ民藝」という言葉を生み出した。陶芸・彫刻だけではなくジャンルを横断し、ハイブリットな文化活動を実践し国際的に高く評価されている。

本シリーズにおいて、ゲイツはシカゴの廃屋やドイツ・イギリスにある古い建物をアートセンターや展示会場にリノベーションすることで、場の歴史など建物に宿るものをふまえた再生・地域やコミュニティの再活性化に寄与したアート・プロジェクトを紹介している。社会課題解決にも繋がる建築空間の創出や有効活用法について考えるきっかけになる。

Architalkシリーズ 2024

「シアスター・ゲイツ:ブラックスペースをつくる」

スピーカー:シアスター・ゲイツ(アーティスト、都市計画家)
モデレーター:片岡真実(森美術館館長、国際文化会館評議員)

シアスター・ゲイツ

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Photo: Rankin

都市デザインと陶芸などを学び、彫刻、インスタレーション、地域再生プロジェクトなどジャンルを横断する活動で知られる。2009年に非営利団「Rebuild Foundation」をシカゴに立ち上げ、都市の打ち捨てられた建物を文化的施設に再生するプロジェクトをアートの実践として行っている。世界的な建築家が設計者として毎年選出されるイギリスのサーペンタイン・パヴィリオンを2022年に担当し、アート、建築と社会的実践への新しい視点をもたらす作品を制作。また、日本の民藝運動とアフリカン・アメリカン芸術の美学を癒合する哲学である「アフロ民藝」の作品も数多く制作している。

公益財団法人 国際文化会館

日本と世界の人々の間の文化交流と知的協力を通じて国際相互理解の増進をはかることを目的に、1952年にロックフェラー財団をはじめとする内外の諸団体や個人からの支援により設立された非営利の民間団体。創立70周年を機に「多様な世界との知的対話、政策研究、文化交流を促進し、自由で、開かれた、持続可能未来をつくることに貢献する」という新たな使命のもと、アジア・太平洋地域を代表する知の交流の拠点となり、グローバルでよい高いインパクトを発することを目指している。事業活動は主として、①国際関係・地域研究・地政学、②社会システム・ガバナンス・イノベーション、③文明論・哲学、④アート・デザインの4つの領域からなるプログラム部門と、その事業を支える国際交流の場としての施設の維持運営にあたる業務部門とからなる。