「見たい」という欲望を叶えた装置で見えた歴史に思いをはせる

鈴木のぞみ個展「The Mirror, the Window, and the Telescope」がポーラ美術館で2024年12月1日(日)まで開催中。本展は過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する、今回で16回目を迎える展覧会シリーズ「HIRAKU Project」としての展示。写真の原理を用いて、身近な日用品や古い家屋に潜む記憶や光の痕跡を可視化し、オブジェとイメージによってインスタレーションを生み出す鈴木のぞみの作品を展示している。

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《The Rings of Saturn:舷窓―アイリッシュ海》2020年
イギリス製の舷窓、写真乳剤 北川正人蔵
Photo: Ken Kato
The Rings of Saturn: Porthole―The Irish Sea, 2020
British porthole, photosensitive emulsion Collection of Masato Kitagawa
Photo: Ken Kato

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《窓の記憶:関井邸2階東の小窓》2012年
外されていた窓、写真乳剤 個人蔵
Photo: Ken Kato
Latent Images of Windows: Small Windows from the East Side of the Second Floor of the Sekii Residence, 2012
Detached windows that has been removed, photosensitive emulsion
Private Collection Photo: Ken Kato

鈴木は大学で絵画を専攻していたが、独学で写真技術を学び始め、2012年に自身のアトリエであった築90年の古民家の木枠付き窓ガラスを用いて作品を制作。その窓から見えたであろう風景を撮影し、感光乳剤を塗布した窓ガラスそのものに焼き付けた。鈴木は、こうした日常のありふれたものに宿る「事物の記憶」を浮かび上がらせ、ものに直接定着させることを試みている。その後2019年に渡英し、船の窓や望遠鏡、ルーペといった様々な遺物や視覚装置を入手し、その来歴を調査。人類の視覚体験や近代化を切り開いてきた科学や技術の進歩、ある時代や社会が共有する感覚や嗜好性を反映したイメージをそれらに焼き付け、「大衆の記憶」を暗示するような作品へと昇華させた。

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《The Rings of Saturn:ゾグラスコープ―サンクトペテルブルク大学の眼鏡絵》2024年
フランス製のゾグラスコープ、写真乳剤 作家蔵(画像協力:横浜市民ギャラリーあざみ野)
Photo: Ken Kato
※新作
The Rings of Saturn: Zograscope―Perspective Print of St Petersburg University, 2024
French zograscope, photosensitive emulsion Collection of the Artist (Courtesy of Yokohama Civic Gallery Azamino)
Photo: Ken Kato

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《The Rings of Saturn:燭台付き鏡―蝋燭》
左:2023年、個人蔵 右:2021年、沖一成蔵
イギリス製の燭台付き鏡、写真乳剤
Photo: Ken Kato
The Rings of Saturn: Mirror with Candleholder―Candle
Left: 2023, Private Collection Right: 2021, Collection of Kazunari Oki
British mirrors with candleholder, photosensitive emulsion
Photo: Ken Kato

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《The Rings of Saturn:眼鏡―クリスタル・パレス》2020年
イギリス製の眼鏡、写真乳剤
村田真蔵
The Rings of Saturn: Spectacles―The Crystal Palace, 2020
British spectacles, photosensitive emulsion
Collection of Makoto Murata

鈴木のぞみ

1983年埼玉県生まれ。埼玉県在住。2007年東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。2015年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。2022年同大学院博士後期課程修了。2016年「VOCA展2016 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)VOCA奨励賞受賞。2018年度ポーラ美術振興財団在外研修員(イギリス)。

近年の主な個展に、「Words of Light(光の言葉)」第一生命ギャラリー(東京、2024年)、「The Rings of Saturn / Mirror with a Memory」rin art association(群馬、2021年)など。

主なグループ展に、「セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」東京都写真美術館(2023年)、「潜在景色」アーツ前橋(群馬、2022年)、「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」東京都写真美術館(2017年)、「NEW VISION SAITAMA 5 迫り出す身体」埼玉県立近代美術館(2016年)などがある。作品は東京都写真美術館、アーツ前橋、ガトーフェスタ ハラダなどに収蔵されている。

HIRAKU Project Vol.16 鈴木のぞみ「The Mirror, the Window, and the Telescope」開催概要

会期2024年6月8日(土)~12月1日(日) 会期中無休
会場ポーラ美術館1F アトリウム ギャラリー
料金無料
URLhttps://tinyurl.com/3utr2wxe