印象派から近代、戦後美術のムーブメントを決定づけた作品が勢揃い
フィリップスが「アヴァン・ギャルドを生きる:トリトン・コレクション財団」のイブニング・セールを、2023年11月14日(火)にPHILLIPS NEW YORKにて開催する。今回、トリトン・コレクション財団から30点の著名作品が出品され、パブロ・ピカソの《Femme en corset lisant un livre》(1914-1917年)、ジョルジュ・ブラックの《La bouteille de Bass》(1911-1912年頃)、ジョアン・ミッチェルの《Untitled》(1954年頃)など、印象派から近代、戦後美術のムーブメントを決定づけた作品が勢揃いする。さらに、フェルナン・レジェの《Le 14 juillet》(1912-1913年)も同セールに出品され、この作品は「Fumées sur les toits」(1911-1912年)シリーズから、最近発見された完成作品が裏面に描かれている。
トリトン・コレクション財団は、美術品購入の際の鋭い審美眼で高い評価を得ている。今回出品される作品群は、トリトン・コレクション財団の品質、重要性、希少性を反映したものであり、コレクション全体にも呼応している。今回、ほとんどオークションには出品されたことのない、市場に初めて出回る作品が集結。ニューヨークでの展覧会とオークションに先立き、パリ、香港、ロサンゼルスで実施される巡回展示は、これらの素晴らしい作品が初めて一堂に会し、一般公開される機会となる。
キュビスムの傑作
2つの作品によって構成されるこの絵は、表面にフランスの国祭日をキュビスム的に解釈した《Le 14 juillet》、裏面に新たに発見された《Fumées sur les toits》シリーズの作品が描かれている。
しかし、保存修復師たちの懸命な努力により、トリトン・コレクション財団は裏面の絵を修復することができ、昨年、オランダのクレラー・ミュラー美術館で史上初めて展示された。長い間埋もれていたこの作品は、レジェのアトリエの窓から見えるパリの屋根の景色から生まれた「Fumées sur les toits」シリーズに属するもの。噴煙、煙突、ノートルダム大聖堂の塔は、レジェのキュビスム絵画をより抽象的で色彩豊かな方向へと導くインスピレーションになった。
対象物とその周囲の空間をほとんど区別することなく、画面を交差する平面に分断するトリトン・コレクション財団所蔵のブラックの《La Bouteille de Bass》は、ピカソとブラックが最も緊密な共同作業を行っていた時期の傑作。ブラックは「二人の登山家がロープでつながれているようだ」とその時期を形容している。タイトに凝縮された短い筆致と、緩やかで光り輝く筆致が対比される、驚くほど多彩な折れ線状の筆致によって構築されたこの作品では、タイトルのオブジェがそれを取り囲む空間に溶け込んでいくように、表面全体が非常に生き生きとしていいる。この時期のブラックとピカソの静物画で繰り返し描かれる題材であるバスのボトルは、文字表現によって見分けられるようになり、構図を観察可能な世界に引き戻し、絵画的要素を読み解く鍵となる。
第一次世界大戦が勃発し、多くの芸術家の移住により、このような共同作業と創造的な交流の精神は自然に終わりを告げたが、ピカソはこの経験を第一次世界大戦後の絵画制作に生かし、新たな個人的、職業的な機会によって、キュビスムの実験により遊び心を加えた。ピカソの《Femme en corset lisant un livre》(1914-1917年)は、ブラックの初期の作品と対をなす見事な作品で、戦前の数年間における先鋭的な実験の集中的な時期に得られた経験を体現している。平坦化された絵画空間、複雑な画面構成、色彩と模様の遊び心のいずれも、この重要な時期におけるピカソのスタイルの進化を示している。
戦後美術のアイコン
抽象表現主義画家ジョアン・ミッチェルの初期作品《Untitled》(1954年頃)は、アーティスト・エステートから直接トリトン・コレクション財団に寄贈された。この印象的な大型のキャンバス作品は、1950年代初頭のミッチェルの画風が、より幾何学的でデ・クーニングにインスパイアされた美学から、鮮やかな色彩と大胆な筆致による成熟した構図へと変化していく過程を記録している。その中間地点に位置する《Untitled》は、彼女自身を確立し始めた作品。素早くエネルギッシュな筆致は上向きの動きが強く、黒、石板色、コンクリート・グレー、茶色を基調とし、赤、紫、黄色の鮮やかな色彩が混ざり合った色彩は、ミッチェルが過ごした1950年代のニューヨークを体現している。
彼女のモダニズムの先達たちと同様に、ミッチェルも《Untitled》の中で近代都市の色彩とエネルギーを取り上げている。実際、彼女のパレットは、キュビスム画家のパリを想起させると同時に、抽象表現主義画家としての彼女自身のニューヨークを象徴している。
印象派とナビ派
「アヴァン・ギャルドを生きる:トリトン・コレクション財団」は、特異な印象派画家エドガー・ドガに始まる美術史の革新の糸をたどっている。同世代の画家たちの戸外制作傾向に批判的だったドガは、色彩、光、日常的な観察といった印象派の価値観を室内の情景に応用しており、1894年頃の《Le petit déjeuner après le bain》はその好例。ドガが捉えたのは、風呂上がりに体を乾かす女性の、親密で一見自然な光景。裸の女性の背中の傾斜と、低い位置で結んだ赤いお団子の髪は、ドガの象徴的なダンサーの姿を思い起こさせる。この作品はコレクションの中でも特に人気があり、アムステルダムのゴッホ美術館に長期貸与されている。
また、トリトン・コレクション財団は、近年オークションに出品され始めたエミール・ベルナールやポール・セリュジエなどのナビ派の画家たちの作品の中でも、特に優れた出所と高い意匠性を持つ作品を収蔵している。セリュジエの《La Cueillette des pommes》は、画家が初めて寓意的な主題に取り組んだ作品。リンゴを収穫するブルトン人の女性を描いたこの作品は、「知識の木」の寓意でもある。この作品は、ゴッホ美術館に長期貸与されていたヴュイヤールの《Le Cantique des cantiques》、モーリス・ドニの《La vendange mystique》とともに、過去20年間に世界各地で開催された展覧会に出品されている。
フィリップス
20、21世紀の作品を売買するグローバルなプラットフォームとして、フィリップスは近・現代アート、デザイン、写真、エディション、時計、ジュエリーの分野において専門知識を提供している。オークションと展覧会は主にニューヨーク、ロンドン、ジュネーヴ、香港で開催され、さらに、ヨーロッパ、アメリカ、東京を含むアジア各地に代表オフィスが置かれている。フィリップスでは、即時購入できる作品とあわせて、ライブ及びオンラインオークションを定期的に開催。また、プライベートセール、鑑定、査定、ファイナンシャルプランニングに関するサポート含め、収集に関する幅広いサービスとアドバイスも提供している。