ノルウェー建築ファームのアート作品「Il primo cerchio del paradiso」がベネチア 建築ビエンナーレ2021に展示
建築へのアーティスティックなアプローチで知られるノルウェーの建築ファームビョーノルダル・アーキテクトスタジオ(Bjørnådal Arkitektstudio)は、ベネチア 建築ビエンナーレ2021のためにイベントのテーマ「時間、空間、存在」をもとに、作品「Il primo cerchio del paradiso」を制作。ベネチアのマリナレッサ庭園にて、2021年11月29日まで展示されている。
文化交流の輪
当作品において、ビョーノルダル・アーキテクトスタジオ代表のハンス・ペッター・ビョーノルダルは、ノルウェーとベネチアの文化交流を表現するにあたり、1432年の出来事にまで遡る。オランダを目指して北海に出航したベネチアの商船が、難破して辿り着いたノルウェーで、ストックフィッシュ(干し魚)と出会い、そこからノルウェーとベネチアの交流が始まったとされている。ベネチアに持ち帰られたストックフィッシュを用いて様々なイタリア料理が開発され、ノルウェーからベネチアへ大量のストックフィッシュが流通することとなったのである。今日も続くその交流は、難破したベネチア商船の船長が「パラダイスの輪の始まり」と表現したノルウェーのロフォーテン諸島が起源となったのである。
ビョーノルダルによる作品は、気候変動や環境意識、シンプルライフへの回帰など、現代の課題に重きを置きながら、過去から現在にわたって続くノルウェーの国外との文化的な交流に目を向けている。
当プロジェクトは、シンプルな暮らしをノルウェー的に表現したものであり、気候変動に対する考え方や方向性の転換を求める現在の状況を反映したものでもあります。パラダイスの発見に導いてくれるのは、やはり自然と調和したシンプルな暮らしである、というメッセージなのです。
ハンス・ペッター・ビョーノルダル
伝統によって統合された素材、工法、表現
展示会のテーマ「時間、空間、存在」に沿って、ビョーノルダルは、ストックフィッシュ交易によって生まれた繋がりをシンプルに表現している。ノルウェーの伝統的なストックフィッシュの2つの作方を融合させ、木製の船を連想させるビジュアルは、2国間を木製の船で行き来した勇敢な船乗りたちへのトリビュートでもある。松の木とスチールワイヤーで構成された、高さ5m、幅2.9mの作品は、ノルウェーの伝統的な建物を象徴する自然の造形、六角形に形作られることで、過去から現在に続く600年の時の流れを繋げている。
ノルウェーとベネチアの文化交流の基盤として何世紀も行われてきたストックフィッシュの交易は、自然環境とのシンプルな繋がりによって成立しています。ベネチアのレストランには、干しダラを利用したメニューがあり、ベネチアのストックフィッシュを利用したマカロニグラタンは、ノルウェーに浸透し、今では国を代表するメニューにまでなっています。
ハンス・ペッター・ビョーノルダル
サステナブルな側面
さらに、環境への配慮を強調するため、Ribiennaleという団体の協力を得て、サステナブルな材料を確保した。Ribiennaleは、ベネチア市民、学生、建築家、アーティスト、政治活動家などによる協同プロジェクト。それぞれのアイデアやメソッド、技術を活用し、過去のベネチアビエンナーレの展示で利用した素材の再利用を行いながら創造活動を展開する団体である。
ビョーノルダル・アーキテクトスタジオ(Bjørnådal Arkitektstudio)について
2007年設立。ビョーノルダル・アーキテクトスタジオは、ノルウェー全土に事業を展開し、顧客のスタイルや好みを自然と融合させるアプローチで知られている。建物の新設だけでなく、既存建物の再生、増設、リノベーションなども手掛ける。サステナビリティや耐久性を主軸に置きながら、省エネや素材の耐久性などにも配慮する。当スタジオの代表、ハンス・ペッター・ビョーノルダルは、環境に優しいユニークなソリューションを提案し、実体験に基づいたプロジェクトに、人、ランドスケープ、文化、社会学、方法論、全てを包括したアプローチを心掛けている。
「ベネチア 建築ビエンナーレ2021」開催概要
会期 | 2021年5月23日~11月29日 |
会場 | パラッツォ・ベンボー、パラッツォ・モーラ、ジャルディーニ・マリナレッサ(ベネチア) |
テーマ | 「時間、空間、存在」("Time Space Existence") |