光と動きが織りなすアート

フィンランド、エスポーにあるアールト大学のKideビルに、フランスのアーティスト、バプティスト・デボンブールによるパブリックアート「In Motion」が設置された。この作品はアールト大学の依頼により、キュレーターのOuti Turpeinenによって監修された。KideビルはSARC + SIGGE Architectsによって設計され、主にアールト大学の基礎科学(応用物理学)と電気工学の学部のために建設された。

adf-web-magazine-in-motion-10

'In motion' – public art, commissioned by Aalto University for the Kid Building, Dipoli, Otakaari 24, Espoo, Finland. Curated by Outi Turpeinen. Technical information: mirror polished stainless steel (AISI 316), Dune small 3 mm Fielitz GmbH © laser-cut by Laserle Oy, technical drawing by Sweco Finland, installation&chemical wall sealing by Urmet Aare. Courtesy Patricia Dorfmann – Paris; Ipercubo Gallery – Milan; Krupic Kersting Gallery – Cologne; Studio Baptiste Debombourg – Paris.
Photo credit: Baptiste Debombourg | Adagp

デボンブールの「In Motion」は海の波が建物や風景に反射する光の効果に着想を得て制作された。建物が歩行者や車、トラムが行き交う交差点に位置し、海にも近いことから、これらの要素が相互作用するデザインが選ばれた。鏡面仕上げのステンレススチールは波のような形状をしており、動きと光のテーマを引き立てると同時に、反射によって周囲の風景や動きを増幅させる。光の強さや時間帯に応じて異なる表情を見せ、特に暗がりでもその効果を発揮している。

外観デザインは1階の窓の構造を反映し、流れる液体のように形作られた造形が空間を侵食し、動きとともに空間を満たしている。内部では波が飛び散るような表現が施され、訪れる人々をそのダイナミックな動きで迎え入れている。さらに、このインスタレーションは建物の外観に新たな視点をもたらし、同時にランドマークとしての役割も果たしている。

バプティスト・デボンブール

主に彫刻を中心に制作するアーティストであり、情報や素材を組み合わせた実験を通じて抑圧されたり、語られていなかったり、無視されてきた物語を明らかにすることに挑む。彼は「修復者」としての役割を自認し、壁や家具、物体を修復しつつも、その傷跡をあえて見せることで破壊や未完成な修復、さらには回復力そのものに敬意を表している。作品はその巨大さにもかかわらず、パラドックス的であり、脆さや不安定さを持っている。また、時間、歴史、記憶、そして夢についての深い考察が、作品の背後にあるテーマとなっている。