1960年代カウンターカルチャーを感じられる「歴史書」
ヒッピー、LSD、コミューン、ヒューマン・ビーイン、ウッドストック、反戦運動、SDS、シカゴ・セブンなど、現代では半ば神話化しつつある伝説のような出来事が相次ぎ、文化的・政治的・経済的な変化を促す大きなムーヴメントとなった1960年代のアメリカ「カウンターカルチャー」。本書『60sカウンターカルチャー』(2024年4月19日発売、訳:伊泉龍一)でその全容を歴史家である著者のロバートC.コトレルが紐解き、解明する。
コトレルは当時の新聞や雑誌などの論説や記事を中心に当事者や批評家などの賛否どちら側の声も引用しながら綿密に調査し、ほぼ私見を交えず極めて冷静に叙述を進めた。アレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックらのビート作家たち、ティモシー・リアリーやケン・キージーなどのドラッグ普及者たち、ジェリー・ルービンやアビー・ホフマンらの政治的過激派、フリーの思想を実践したエメット・グローガンをはじめとするディガーズ…この時代のオルタナティヴな世界を夢見た人々はどこへ向かおうとしていたのか。
本書はその始まりから終焉までの流れを鮮やかに描き出しながら、多角的な面から実態を捉え直し、「カウンターカルチャー」という巨大なうねりの全貌を改めて概観する。
本書に含まれる、1960年代の主な出来事や人物
- 60年代のカウンターカルチャー以前のアメリカのボヘミアニズムやユートピア的な共同体主義
- 東洋のスピリチュアリティへと意識を向けたジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグらのビート・ジェネレーションからヘルマン・ヘッセのような文学者たち
- オルダス・ハクスリーやティモシー・リアリーやラム・ダスやジョン・キージーのような精神探求や意識の拡張のためにドラッグを使用した先駆者たち
- 性の抑圧からの解放を訴えたヘルベルト・マルクーゼやノーマン・O・ブラウンやヴィルヘルム・ライヒの思想
- 各地で展開された反体制的なアンダーグラウンド出版
- ディガーズによるフリー・フード・プログラムを中心とした反資本主義・反市場経済的な活動
- 行動主義心理学のB・F・スキナーのユートピア主義的な理想や各地に誕生した自給自足的なコミューンの状況
- ヒッピーたちの記念すべき集会となったヘイト・アシュベリーでのヒューマン・ビーイン
- ポピュラー・ミュージックの大規模な野外コンサートの原点となったウッドストック・フェスティバルやオルタモント・フェスティバルなど
- サンフランシスコでの「サマー・オブ・ラブ」から「ヒッピーの死」まで
- 国防総省での行進を始めとする大規模な反戦運動
- アビー・ホフマンやジェリー・ルービンなどを含むシカゴ・セブンの裁判
- ブラックパンサー党やイッピーやウェザーメンなどの急進派の活動
ロバートC.コトレル / 著者
カリフォルニア州立大学チコ校の歴史とアメリカ研究の教授。急進派ジャーナリストのI・F・ストーン、米国自由人権協会のアイコン的人物ロジャー・ナッシュ・ボールドウィン、黒人リーグ創設者ルーブ・フォスターの伝記を含め、20冊を超える本を執筆している。最近の著書には、Two Icons: How Hank Greenberg and Jackie Robinson Transformed Baseball and Americaがある。現在は、20世紀初頭のアメリカの左派の4人の主要人物、クリスタル・イーストマン、ジョン・リード、アイネス・ミルホランド、ランドルフ・ボーンを一冊にまとめた伝記に取り組んでいる。
伊泉龍一 / 訳者
翻訳家。手がけた作品に、ピーター・ビーバガル著『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ――いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』、ジェイソン・ヘラー著『ストレンジ・スターズ――デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』、デヴィッド・ヘップワース著『アンコモン・ピープル――「ロック・スター」の誕生から終焉まで』(駒草出版)、ドン・ラティン著『ハーバード・サイケデリック・クラブ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』(フォーテュナ)。他多数。
『60sカウンターカルチャー』書籍概要
発売日 | 2024年4月19日 |
仕様 | A5判/上製 720頁 |
ISBN | 978-4-909646-76-7 |
定価 | 6,930円(税込) |
発行元 | 駒草出版 |
URL | https://tinyurl.com/4re8247y |