歴史が積層し受け継がれる東京の風物詩

アーツ千代田3331では、江戸時代から続く伝統の「山王祭」の開催時期に合わせ、2022年6月4日(土)から6月19日(日) まで「アーツ千代田3331特別企画展『山王祭がゆく 〜二人の絵師と人・まち・祭〜』」を開催する。山王祭と言えば番町・麹町・日本橋・京橋・銀座周辺という、日枝神社の広大な氏子町を豪華な山車や附祭(つけまつり)が、300mの長い行列となって街を練り歩く、華やかな祭礼行列の「神幸祭」が見所のひとつ。

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ビルに覆われた大都市・東京の街を背景に勇ましい木遣り(きやり)の声が響き、時代装束に身を包んだ総勢500名が厳かに歩を進める光景は江戸からの歴史が積層し受け継がれる東京の風物詩であり、その場所に住む人々が作り出した都市文化とも言える。本展は現代に生きる絵師 岡田親(ちかし)と木下栄三2名による江戸と現代が交錯する作品群と、江戸時代に描かれた山王祭の壮麗な絵巻物(レプリカ)を同時に展示し、一時的に姿を消した祭礼行列を振り返りハレの日として祭を迎える人々の心情や街の景色に思いを巡らせる展覧会。歴史・美術・都市文化の三つ巴で東京の魅力を味わうことができる。

展示内容

絵巻「山王祭礼之図 第一巻」[作者不詳 / 日枝神社蔵](レプリカ)

江戸時代中期の山王祭における祭礼行列の様子を描いたもので、作者は不詳。華やかな装束に身を包んだ行列と山車・附祭(つけま つり)の様子は江戸時代に行われた山王祭の様子を知る貴重な歴史資料であると同時に、祭に浮き立つ江戸の町民たちの姿が伺える、楽しい絵巻物。第一巻は16.5m、第二巻は13.6m、第三巻14.91mの総長約45mから成る絵巻のうち、本展では第一巻を忠実に再現したレプリカを展示。

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絵巻「山王祭礼之図 第一巻」部分 ( 作者不詳 日枝神社蔵

現代に生きる二人の絵師 岡田親 ( 江戸町火消錦絵師 ) と木下栄三 ( 画家・建築家 ) の競演

岡田は幼少期の頃より実際に地域で祭に参加し、自分の目で見てきた祭に関わる「粋」な人々を描き続けてきた。一方の木下氏は祭の氏子地域の街の風景の今昔を、事実に基づいて重ね絵図で表現してきた。二人の作品から、感染症拡大によって一時的に姿を消した祭の熱気や街の活気に思いを馳せ、来たるべき祭の復活の日を祈る。

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岡田親「江戸町火消 六十四組勢揃 その一」

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木下栄三「鍛治橋御門」

昭和初期に造られた御仮屋を鳶頭(かしら)の手で再建

「御仮屋」(おかりや)とはお祭りの期間にのみ造られ、神輿渡御の際に一時的に神輿が休む「仮の宮」のこと。御仮屋の存在は町の祭の気分を一気に盛り上げる。本展では2018年より当館に寄託されている木製の御仮屋を、鳶頭(かしら)の手でウッドデッキに再建。通常は神輿が入るために立ち入ることができない御仮屋の内部をじっくり見ることができる。

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山王祭レポート

本年度の山王祭は、神幸祭や神輿宮入などの大規模な祭礼行事は中止になったものの、各氏子町ではコロナ禍での工夫を凝らし思いを込めた自分たちなりの祭を実施する予定て。その取り組みをレポートするドキュメント展示を行う。

各町会の鮮やかで個性豊かなの手ぬぐいを一挙展示

祭衣装にかかせない手ぬぐいは、町会ごとに色や文様も異なり、個性豊かで色とりどりのデザインで作られる。本展ではこれまでの日枝神社の氏子町会の手ぬぐいを一挙展示し、お祭りのにぎやかな雰囲気を演出する。

作家紹介

岡田親 (江戸町火消錦絵師)

明治時代初期から続く老舗の寿司屋「京すし」の4代目主人であり、「江戸町火消錦絵師」として高い評価を得ている。幼少の頃、近所に住んでいた叔父の鳶頭の影響で町火消しに興味を持ち、高校生のころから錦絵の収集を開始。20代半ばから独学で錦絵を描き始め、現在までに2500枚以上の作品を制作。

木下栄三 ( 建築家、画家、江戸検定一級 )

1950年名古屋生まれ。東京・神田に勤務するようになって既に40年近くになる。現在建築の設計を生業とし、合わせて画業も自身の生き方の一つとして続けている。さらに画業の一部として歴史や文化に親しみながらその遺産を記録し、絵として伝えることをライフワークとしている。

「山王祭がゆく 〜二人の絵師と人・まち・祭〜」開催概要

会期2022年6月4日(土)から6月19日(日) まで
時間11:00~18:00 / 月曜日休場
会場アーツ千代田 3331 1 階 104、ウッドデッキ
入場料無料