700年の歴史を持つ古都チェンセンとランナー文化を受け継ぐ
チェンセーンは1327年、チェンセーン王国の首都として建設され、その後も歴史の中で盛衰を繰り返してきたがメコン川再開発に伴いラオス・ミャンマーなどとの交易の玄関口として注目を集めている。現在もランナー文化と称されるタイ北部独自の文化・伝統が色濃く残り、メコン川のほとりにあるチェンセンにはランナー王朝時代の遺跡群が数多くある。
アティタ・ヒドゥンコート・チェンセン・ブティックホテルは、700年の歴史を持つタイ北部の古都チェンセンの文化保存と発展をコンセプトとして設立された。アティ・トン・ケアオ寺院に隣接したロケーションで、寺院の広場は重要な行事のための旧コミュニティセンターとなっている。
チェンセンの伝統的な建築は調和を生み出すというコンセプトに基づいていて建てられているが、ヒドゥンコート・チェンセン・ブティックホテルもまた、古い寺院と新しいホテルとの間に緩衝空間を作るレイアウトに設計されている。L字型に配置されたこの緩衝地帯は寺院とホテルの間の空間を作り出し、寺院の美しさを際立たせるものとなった。
チェンセンの文化と調和するよう、この街で入手が容易な木とレンガなどが主な材料として選択されている。また、囲い込み、オープンスペース、間仕切りなどの石組み手法でレンガの不透明感を低減させ、囲い込みと開放を両立させる動線を作ることで、チェンセンの住宅を彷彿とさせている。このような材料に関する知識や手法は、古都チェンセンの文化の中の様々なところで培われてきた。
建築家は地元の職人とともに、その土地の知恵を生かしながら素材を考え、街中に点在する古代の寺院やパゴダと同じレンガを使用して建てられている。結果的にランナー建築の謙虚な精神を実感し、チェンセンの町に深く根ざした伝統の真の意味を知ることができた。