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ミース・ファン・デル・ローエとバルセロナ・パビリオンと

ドイツも暖かくなり、バウハウス100周年を祝う関連イベントや書籍をよく目にするようになってきた。今から90年前、ミース・ファン・デル・ローエがバウハウスの第3代校長を務める前年の1929年(昭和4年)に設計した、バルセロナ・パビリオン(Barcelona Pavilion)を今回は紹介する。

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe, 1886 - 1969)

ドイツ出身のモダニズム建築家で、近代建築の四大巨匠の一人。ユニヴァーサル・スペースと呼ばれる、鉄骨造・鉄筋コンクリート造を用いた、内部空間を限定せずどのような用途にも対応できる空間を提唱した。「Less is more (少ないことは、より豊かなこと)」や「God is in the detail (神は細部に宿る)」などの言葉が有名。1930年から1933年の閉校までバウハウスの第3代校長として教鞭をとった。ナチスによるバウハウス閉鎖に伴い1937年にドイツを去り、アメリカへと亡命する。

バルセロナ・パビリオン(Barcelona Pavilion, 1929/1986)

1929年にスペインのバルセロナ万国博覧会で建設されたドイツ館。鉄・ガラス・石・水面で構成され、モダニズム建築の傑作の一つとして知られる。ガウディが74歳で亡くなった3年後、ミースが43歳の時に設計された。 1927年にシュトゥットガルトで開催された、ドイツ工作連盟の住宅展覧会の運営に成功したミースは、1928年にこの建物の委託を受けた。仮設のため完成してから1年も経たない1930年初めに解体されたが、ミース生誕100周年に当たる1986年に博覧会当時と同じ場所に復元された。 同館のためにデザインされたバルセロナ・チェアも、モダンデザインの傑作として知られている。

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建物全体はトラバーチンの基壇の上にあり、大理石の壁によって囲まれている。 水平に伸びる薄い屋根を、8本の十字形断面の鉄柱が支える構造。構造から独立した石・ガラスの壁は自由に配置され、内部・外部にわたって流動的な空間を作っている。

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大理石トラバーチンで床・壁・ベンチは構成され、入り口には玉石が敷き詰められた大きな水盤が配置されている。壁は風景を切りとり、水面が空間を拡張している。

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エントランスの壁は竣工当時はスタッコ仕上げであったが、復元の際にミースの意図を尊重し、大理石仕上げに改められた。床、壁、屋根のモデュールは幾何学的にきれいに収まっている。

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中心には象徴的な赤いオニキスの壁があり、バルセロナチェア・オットマンが配置されている。 大きな屋根の中心付近には曇りガラスで囲まれた光庭があり、トップライトから室内にやわらかい光が差し込む。

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奥の壁に囲まれた屋根のない空間には黒色ガラス仕上げの小さな水盤があり、水面には彫刻家ゲオルグ・コルベの裸婦像が置かれている。 大理石の文様は左右対称に反復され、水面にも壁のパターンが連続するように映りこむ。現代的な抽象空間に古典の具象彫刻が配置されている。

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構造から独立した、石とガラスの壁の自由な平面で、完全に仕切らず回遊性を持たせた空間構成。セレモニー用のため、内部に複雑な機能はなく、空間は透明・不透明な壁に囲まれ、内側と外側がぼやけている。

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4本のL字鋼で十字型を作ったクロムメッキの鉄骨の柱が、水平に伸びる薄い屋根を支えている。 薄い水平屋根のラインが強調されており、屋根の上には小さなトップライトが置かれている。

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ミースがリリー・ライヒと共同でデザインしたバルセロナチェア・オットマンは、バルセロナ万国博覧会の開会式典でスペイン国王夫妻を迎えるために作られたこの建物に置かれた唯一の家具。 ステンレスのフレームをX型に組み合わせ、革の座に白い革張りのクッションをのせている。椅子の幅・奥行き・高さは等しく、全体がきれいに立方体に納まるプロポーションである。

現在のバルセロナ・パビリオンは1986年に復元され、ミース・ファン・デル・ローエ記念館として公開されている。離れにはショップが併設されており、パビリオンやミースに関する資料が扱われている。