集いをエネルギーに変える
マーゴット・クラソイェヴィッチ建築事務所が地域コミュニティに再生エネルギーを供給する教会建築プロジェクトを発表した。この教会は古くから宗教と政治の歴史を持つモンテネグロの、崖の中腹に新しく設計される。モンテネグロでは1600年代にはオスマン帝国から逃れるために多くの正教徒が山奥に脱出し、そののちも繰り返され、今日ではアドリア海への近道となる数多くの未発掘の山岳トンネルが特徴的な、観光と鉱業で繁栄する国となっている。
モンテネグロで最も有名な断崖絶壁にあるオストログ教会への巡礼は、険しく危険でダイナミックな地形であるにも関わらず今日でも盛んに行われている。しかし危険なほど曲がりくねった道路は多くの事故や死亡の原因となっており、そのことを思い出させるように、道路沿いに死者を悼む石碑が点在している。
本プロジェクトは、この地域の自然の美しさを尊重しながらも、人を寄せ付けない厳しい景観を考慮し、よりアグレッシブでダイナミックなアプローチでデザインを提案している。モンテネグロには「ボラ」と呼ばれる偏西風が吹いており、最高峰では最も速く、崖に沿って吹き抜ける。コトルとブドヴァの間に位置する本プロジェクトは、この地域で開催される人気の夏の音楽フェスティバルやレイブと、再生可能エネルギーを集めた教会を組み合わせたものとなっている。
偏西風は最高緯度で時速100マイルに達することがあり、この建築は風力タービンを通して風の流れを制御している。風力タービンは直列に配置され、チャペル内の異なる断面を通過する際に速度を加速させ、速度と効率を高めている。この建物ではアルキメデス・スパイラル・タービンを使用しているが、これはより弾力性があり、モンテネグロの環境特性に適しているからである。
教会には自己表現と礼拝のために団結する人々の集まりである「集会」のアイデアを取り入れており、海岸沿いで開催される近隣のレイブや音楽フェスティバルはその一例。本プロジェクトのコンセプトは、人々が集まることによる熱力学と圧電性を利用し、風力エネルギーとともに発電することで、モンテネグロの遠隔地に再生可能エネルギーによる持続可能性をもたらし、人々に資する空間とプラットフォームをデザインすることである。余剰エネルギーにより、近隣の都市からアドリア海へとドライバーを導く危険なカーブの多い道路を照らすために使われるようになり、この厳しい自然条件も歓迎されることになる。
この建築は、導電性ポリマーを含む熱電材料を使用し、温度上昇にさらされると熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。ポリマーはより適応性が高く、幾何学的に柔軟であるため、建物の複雑な形状に必要である。教会とレイブ・クラブに集う人々は電気を生み出すのに十分な熱エネルギーを発生させる。この熱電効果は、しばしば圧電効果と結びつき、焦電型赤外線温度検出器に利用されている。半導体の一種である窒化ガリウムは焦電性結晶として最も一般的に使用され、建材やクラッドに応用できる圧電セルと同様、半導体が温度や圧力の変化を検知し、必要なときに電圧を発生させてコンデンサーのように蓄えられた電荷を生成することを可能にする。クラブの円形通路のダンスフロアは、圧電セルを利用して電荷を発生させている。教会とクラブが集うと、建築物、海岸沿いの道路、山々がライトアップされる仕組みになっている。
マーゴット・クラソイェヴィッチ建築事務所
マーゴット・クラソイェヴィッチは、建築協会建築学校とロンドン大学バートレット校で建築教育を修了。ザハ・ハディド建築事務所で働き、UCL、グリニッジ大学、UWA、ワシントン大学で学部および修士課程のスタジオ・ディレクターを務め、デジタルおよび持続可能なデザイン・プログラムを研究。その後、環境問題、再生可能エネルギー、持続可能性を設計プロセスの一部として統合することに焦点を当てた、学際的な建築設計スタジオを開設。
現在、アジアでのプロジェクトに携わり、再生可能エネルギーを建築サービスのインフラとして統合・活用している。また、観光だけでなく、日常的な儀式が影響を受ける方法を再定義する水力発電住宅やホテルの設計も行っている。さらに、カタルーニャの大麻農園設計のための最近のプロジェクトでは、持続可能でカーボン・ネガティブな建築材料としての麻コンクリートを研究している。