希望に満ちた会話を呼び起こす、コミュニティ主導の新しいスペース
NY・ブルックリンのコミュニティスペース「Interwoven」は住民が耳を傾け、観察し、夢を描き、内省する場所を提供する自由な共同スペースである。このスペースはギャレットパークに位置し、アーバン・コンガがサウス・ボルチモアのブルックリン地区と共同で制作した。
制作の段階で、子供たちが使用済みの麻薬の注射針を踏んでしまったので公園に入るのを恐れていることや、公園や近隣を悩ませている公害についてデザインチームの耳に入ってきた。またコンセプトデザインを練っている際には、コミュニティのイベントで銃乱射事件が発生し、数人のコミュニティ・メンバーの命が奪われたりした。この小さなスペースを作るだけではコミュニティを取り巻くこのような大規模な制度的問題を解決することはできないが、チームはインスピレーションと希望を呼び起こす空間を作るためにコミュニティと協力することを決めた。
コミュニティは、このような逆境を乗り越え、この地域に存在するポジティブさと強さを押し出そうと集中している。本プロジェクトはコミュニティが主役であり、デザインチームは彼らのストーリーを伝えるためのツールに過ぎなかった。このスペースはコミュニティがコミュニティのためにデザインすべきともいえた。近隣で開催された多くのワークショップを通じ、デザインについてディスカッションを行い、コミュニティのストーリーとフィードバックが集め、コミュニティが自分たちのものと呼べるデザインを形作っていった。このプロセスにおいて、人々がトラウマを分かち合い、心を開くことができる安全な場所を作るために、プレイセラピーのような遊びの手法が活用された。こうしてスペースを形作るすべての構成要素は、コミュニティによって作られ、評価され、改良されていった。
このスペースでは、そこにいる間、人々が何を聞き、何を見、何を感じ、何を夢見るかを考えることを目的としている。老若男女を問わずコミュニティが集い、議論し、これらの問題やなすべき変化について考える場として、ボルチモアの街全体が見渡せる丘の上に位置しており最適な場所といえる。
スペースは4つの階段状の座席構造で構成されており、近隣や街のさまざまなエリアに向かって方向を示し、それらの景色を座席自体に反映させている。4つの独立した部分にはそれぞれ、近隣の問題やより良い未来への希望について、オープンな議論や親密な会話、個人的な内省を提供するためのメッセージが設置されている。何を夢見ているのか、何を聞いているのか、何を見ているのか、何を感じているのか、といったこれらのメッセージをとおして会話が始まることを期待している。
作品の色彩から曲線のフォルムに至るまで、スペースの各要素は落ち着いた環境を作り出すようにデザインされている。メインスペースは、コミュニティ・ミーティング、ダンス・クラス、誕生日パーティー、映画鑑賞会などの集まりのためにオープンにしておき、地面の壁画は、その織り成す幾何学的な形を利用して、遊び心あふれる想像力をかき立てる自由なゲームスペースを作り出している。これらが織り成すパターンは、コミュニティが自分たちで作りだす安全で遊び心のある空間を演出している。
アーバン・コンガ
ニューヨーク州ブルックリンを拠点とする受賞歴のある学際的デザインスタジオ。自由な遊びを通してコミュニティーの相互作用と社会的活動を喚起することに重点を置いている。作品そのものだけでなく、作品が作られる参加型のデザインプロセスにおいても遊びの方法論を重要なツールとして活用している。作品をとおし、より遊びやすい都市を創造するというコンセプトを既存の都市構造の中に包括的でマルチスケールな遊びの機会のエコシステムとして探求している。コミュニティと協力し、かつて見過ごされていた、あるいは十分に活用されていなかった状況を発見・探求し、他者と共感しようとする私たちの生来の意欲を呼び起こす刺激的な創造の場へと変える、包括的な空間を創造している。遊び場を超えた遊びの価値や、あらゆる場所に遊びを増やすことがいかに日常生活に劇的な影響を与えるかについて、考えるきっかけを作ることを心がけている。