独創的であると同時に社会に受け入れられる建築とは 隈研吾が描く「これからの建築、都市の在り方」
大和書房は『全仕事』(隈研吾著)を2022年6月18日に発売した。日本を代表する世界的建築家、隈研吾。問題作「M2」から、転機となった「広重」「梼原」、「南三陸の再生プロジェクト」まで、なぜその素材を選び、何を表現しようとしたのか約30年に及ぶプロジェクトの集大成として、隈にとって重要な作品ひとつひとつについて自ら解説文を添えた、渾身の一冊となっている。
建築ビギナーこそ触れてほしい「隈研吾」の世界
隈研吾は線の建築家だ。線で造形するだけではない。線でひとをつなぐ。パラパラでトビトビの世界をつなぎ、ネットワークに変える。そんな建築家は自分の歩みを長距離走に喩える。隈が走り抜けた「負け」だらけの長い線を辿ると、元気が出る。建築家以外にも読まれたい人生の書。
東浩紀
自然に溶け込む建築、素材との対話、ヴォリュームの解体、閉じた「箱」からの解放、小さな場所、新たな公共性など、既存の枠組みに果敢に挑戦する創作姿勢は、いかにして形づくられたのか?建築の可能性を問い直すとともに、今「建築はどうあるべきか」を模索しつづける、比類なき思想と実践。日本が世界に誇る建築家の創作プロセスをみることができる。隈の建築は世界的な課題と目されるSDGsへの「答え」ともいえるものばかり。だからこそ、建築ビギナーこそ触れてほしい一冊となっている。
隈研吾を変えた55の建築。作品に込められた思いとは
二つの対照的な時代のはざまを生きた。自分の人生を一言で要約すれば、そういうことになる。二つの時代とは、工業化の時代と、その後に来た、脱工業化の時代である。それは同時に二つの社会システムであり、二つの正反対なデザインパラダイムであった。その意味で、僕の全建築作品、僕の全仕事は、時代の証人といっていいだろう。それも、時代のはざまという特別な時間の証人、特別な時間の記録という意味合いを持っている。その僕が生きてきた特別な時間を、さらに四つに分けてみた。
「前書き」より
隈研吾
1954年生まれ。東京大学大学院建築学専攻修了。1990年隈研吾建築都市設計事務所設立。東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。1964年、東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代にアフリカのサハラ砂漠を横断。集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで30か国を超す国々で建築を設計し、国内外で200件以上のプロジェクトが同時進行している。フィンランドより国際木の建築アワード、イタリアより国際石の建築アワード他、国内外で様々なアワードを受けている。
『全仕事』書籍概要
著者 | 隈研吾 |
出版年月日 | 2022年6月18日 |
判型・ページ数 | A5版・352ページ |
定価 | 4620円 |