熱帯の島に建築されたデビッド・ハーツによるサステイナブルな「セイルハウス」がA+アワードを受賞
国際的な建築家 デビッド・ハーツが率いるデビッド・ハーツ・アーキテクツ・スタジオがデザインした「セイルハウス」が、このたびArchitizerが主催する世界最大規模の建築アワード「A+アワード」のプライベートハウス部門(6,000スクエアフィート未満)で審査員賞を受賞した。「セイルハウス」は、カリブ海のグレナディーン諸島に建設された、点在する建物の集合体。この地のヨット文化にインスパイアされたマリン風の張力構造の屋根が特徴の、ゲストハウスを完備した住居である。
「セイルハウス」は、木製の船、マストと帆、そしてそれを支えるステンレススチールの索具などから着想を得て、それらのイメージを住居に適用させたものです。
デビッド・ハーツ
資源が限られるカリブ海での建設では、電気系統や給排水設備からカスタムメイドの梁や支柱などの構造システムまで、全てのシステムを埋め込んだプレハブを、ひとつの器具で簡単に組み立てられる状態でコンパクトに梱包し、15個のコンテナで輸送。運送における効率化と廃棄物ゼロを目指した。プレハブの基礎は、コンクリートの箱の上に設置され、貯水槽となり、住居を地面に固定する錨にもなる。さらに、片持ち梁の支柱にもなることで、建物のジャングルへの影響を最小限にとどめている。
当プロジェクトのメインゴールは、「サステイナビリティ」でした。ボルネオの埠頭で廃棄された硬質木材を再利用。白アリが発生しにくい非腐食性の高いアルミ構造を包んだり、床やデッキ、日照量や気流を調整するルーバーに活用しました。
デビッド・ハーツ
他のインテリアや外装は、編んだヤシやココナッツ殻の破片をはじめ、自然の素材を高度な技術で加工したパネルで仕上げられた。これらの細工は、ジャワ島とバリ島の熟練した職人が手掛けた。
このサステイナブルなプロジェクトを構成する要素は、雨水回収システム、廃棄木材の再利用、自然換気システム、太陽光発電システムなどである。自家発電・給水設備を備え、家の内外の空気の流れや湿度を調整するデザインで、地形や気象条件などを活用して風、水、光などの微気候を効果的にコントロールしている。張力構造の屋根は、赤道直下の強烈な日射を避ける大きな覆いとなり、通常の堅い屋根とは異なる広く深い日陰を提供する。湾曲したデザインは、雨水を効率的に回収し、ところどころに形成された煙突からは熱を放出。空気循環を最大限に行える構造だ。基盤に作られた貯水槽からは、中央のマストを経由して屋内に涼しい空気を送り込むことができる。大きな屋根に降った雨や露は、屋根の端にあるステンレススチールのプレートに集められ、マストを通過して基盤のコンクリートに流れ込む仕組みだ。冷却機能と同時に、敷地内で利用する水を一年中、100%供給する給水の機能も兼ね備えている。
本プロジェクトは、クライアントはロンドンから、建築家はLAから、エンジニアはドイツから参加。全ての製造はインドネシアのジャワとバリで行われ、組み立ては現地のジャワ人の職人によって行われた、インターナショナルなプロジェクトとなった。
デビッド・ハーツ・アーキテクツ・スタジオ(David Hertz Architects, Studio of Environmental Architecture)について
SEAは、再利用素材を活用したサステイナブルな建築デザインに特化している。自然に調和したデザインで、地球と人々のための永続的な価値を追求する。住居や商業プロジェクトにおける、再生デザインやサステイナビリティの専門家を抱えている。地球の気候変動や環境の揮発性などに立ち向かうことのできる建築の役割を信じ、スタジオ内にシンクタンク「Resilience Lab」を創設。火災で家を失った家族の住居再構築を支援するなど様々な啓発的なプロジェクトにも携わっている。建築物と自然が共存できる環境を確保しながら人々を癒し、エコシステムの再構築に努めている。